慶応義塾大学や東京大学の学生らでつくる劇団「遊学生(ゆうがくせい)」は来年3月、太地町を舞台に公演を行う。これに当たって、21日から25日にかけて同町で合宿を実施。地域のスポットや住民との触れ合いを通じ、公演のイメージを練っていく。
「遊学生」は、東京の学生たちが主体となり、地域で演劇の制作や公演を行う団体。鈴木寛・元文部科学副大臣が、東大と慶応大でそれぞれ主宰する「すずかんゼミ」唯一の合同プロジェクトとして2020年に発足した。地域ならではの景色や食に触れたり、地域に根付く歴史や語りを直接聞いたりすることでさまざまな知見を身に付け、それを作品に反映させる。
現在の団員数は、竹本晴登代表(慶応大4年)を筆頭に約20人だが、公演する地域の学生も協力してくれているという。普段は東京で学んでいる学生が、公演を通じて地域の人たちと新たな関係を築くことでしか得られない「新たな学び」をつかんでいる。
毎年、東京以外の地を会場にしており、24年度は鳥取県鳥取市、25年度は石川県金沢市で公演した。公演は代表の出身地で行うのが恒例となっており、本年度は日高川町出身の竹本代表の出身地の和歌山県。日高川町は県西部にあり、竹本代表は紀南地方には詳しくないという。そのため、この地への造詣を深めようという思いがあり、今回、太地町が舞台に選ばれた。
一行は3月に太地町を初訪問し、町歩きして地域住民との交流や町への理解を深めた。今後、夏、秋、冬にも同町を訪れて舞台の方向性決めや脚本制作、稽古へと進んでいく。会場は訪れた地域に根差した場所で行われてきており、過去には収容人数50人程度の古民家で公演したこともあった。今のところは具体的なイメージはできておらず、これから太地町に何度も足を運び、暮らしながらイメージを練っていくという。昨年度の公演では、本番前日の町の人との会話が反映されたこともあり、本番ギリギリまで煮詰めていく。
「遊学生」では脚本を作る際、人ごとで終わらず、現地の暮らしや営みを体感し、実際の行動で得られた経験や知識を生かすようにしている。今回、クジラの町である太地町を舞台とする以上、捕鯨文化は欠かせない要素だが、竹本代表は「何より描きたいのは〝人〟」と強調する。「伝統だから良いというわけではないのではないか。捕鯨の良い悪いという要素ではなく、クジラとともに生きて、暮らしている人たちの思いが重要。それを私たちのように外から見た場合、彼らのなりわいをどう表現するのかは難しいところ」と語った。
今回の訪問を通じて、団員の皆さんは「太地町の人たちはとても温かく、パワーがすごい。家にも招いていただいた」「外部の人間に対して受け入れてくれるのか不安だったが、温かく接してくれて、話にも魂がこもっている」「町の歴史はもちろん、クジラとの関わりや自分の人生を話してくれた」などと話してくれた。
竹本代表は今後に向けて「太地町の皆さんと一緒に作りながら、感じた思いを表現したい」と話した。
(2026年5月29日付紙面より)