那智勝浦町ニュータウン勝浦区で汚水処理施設を運営していた有限会社ニュー勝浦団地サービスの経営破綻を受け、今後の施設運営の行方に注目が集まっている。1日には区内のコミュニティーセンター和で債権者説明会が開かれ、代理人の曽我紀厚弁護士が民事再生計画案を説明。認可地縁団体の同区が汚水処理施設など関連資産を取得し、将来的に町への移管を目指す案を示した。
同区は1989年に造成された住宅地で、町によると8月現在、501世帯1201人が暮らす。汚水処理は民間のニュー勝浦団地サービスが担い、各家庭が月額4400円で契約していたが、経営悪化により昨年12月に大阪地裁へ民事再生を申請した。
曽我弁護士は「汚水処理事業は収益性が低く、事業の引き継ぎ手が現れなかった。破産となれば、汚水処理施設の恒久的運営は難しく、全戸合併浄化槽への切り替えを行うにも現実的に多くの課題を伴う。その状況を見かね、スポンサーに有限会社山永サービスが手を挙げていただいた状況」と説明。
再建には同町天満の有限会社山永サービスがスポンサーとして関与し、来年3月をめどに新会社を設立して運営実務を行うとともに、区と協働し、町への移管を目指していくという。
説明会に先立って10月30日に開かれた区臨時総会では、汚水処理施設、管理事務所、それらの底地、区民向け農園、汚水処理施設の機能・状態の維持に充てるための現預金、温泉配湯施設の底地の資産を区が取得する案を可決。債権者に対する弁済はないが、団地サービスの手元金銭は、将来的な修繕費に充てられるという。
曽我弁護士は「汚水処理施設の稼働継続のため、ぜひご同意いただきたい」とし「もし汚水処理ができなくなり、海洋環境が悪化すれば、地元観光業・水産業に影響が及びかねず、町全体の問題ともいえる」と述べた。
債権者集会は書面投票で行われる。再建計画の認可には、投票した議決権者の過半数かつ総債権額の半分以上の同意が必要。
和泉幸子区長は「区民それぞれ不安も不満もあると思うが、再生計画案を前に進めなければ、浄化槽が止まってしまう差し迫った状況」と窮状を訴えた。
(2025年11月7日付紙面より)