世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部である新宮市の高野坂で現在、「生態系被害防止外来種リスト」の重点対策外来種に指定されているノハカタカラクサ(トキワツユクサとも)が花を咲かせている。白い花が群生している様子は一見美しいが、分布を拡大させないよう注意が必要だ。
外来種とは人間の活動によって他の地域から入ってきた生物。在来の生物と競合して駆逐したり、雑種をつくって在来生物の独自性を損なわせたりするなど、地域の生態系や生物多様性に影響を与えるものを「侵略的外来種」という。分布拡大~まん延期の重点対策外来種としてはセイタカアワダチソウや外来ノアサガオ類などがあり、当地方でもたびたび問題となってきた。
ノハカタカラクサは南アメリカ原産のツユクサ科の多年草で、昭和初期に観賞用として輸入されたものが野生化。耐陰性があるため暗い林床でも育成でき、全国で分布を広げている。
過去には新宮市・熊野学研究委員会主催の自然探訪スクールで高野坂での駆除を行った他、串本町の九龍島(くろしま)でも除草作業が行われた記録があるが、高野坂では再び拡大している。
ノハカタカラクサは茎にある節から根を伸ばして再生できるため、防除には一本一本手で引き抜き、天日にさらして完全に枯死させた後、ビニール袋に密封して処分する必要がある。
当地方では現在、特定外来生物のオオキンケイギクも花期を迎えている。「紀伊山地の霊場と参詣道」は文化遺産だが、滝や原始林、川、岩、温泉などの自然景観を多く含んでいる。登録20周年を迎える今年、世界遺産をいかに後世に継承していくのかが問われている。
(2024年5月17日付紙面より)