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カキを養殖する畑下真次さん(右)と由美さん夫妻=23日、那智勝浦町浦神
浦神産カキで地域振興
ロケット打ち上げと連携も

那智勝浦町

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旧浦神小
浦神小
 「両親が育てていたカキは一粒一粒がもう二回りは大きかったが、味は負けていない」。そう語るのは那智勝浦町浦神でカキ養殖に取り組んでいる畑下真次さん(52)。次回のロケット「カイロス」打ち上げに合わせて来場者に地元産のカキを味わってもらおうと、妻の由美さん(51)と二人三脚で準備を進めている。

 浦神小学校のロケット公式見学場が位置する浦神湾は、昔からカキや真珠の養殖が行われていた。浦神育ちの真次さんの家では、旬の時期には毎日カキ料理が並んだという。サラリーマンを経験した後、3年前から釣り客向けの遊漁船「由乃丸」を運航しながら漁業に携わり、昨年からカキの養殖を本格化させた。

 きっかけは、真次さんの両親が養殖を断念しようとしていたこと。水温などの環境変化でカキが育ちにくくなっており、インターネットなどで情報を集めて学び始めた。由美さんも「私たちの生活があるのも、代々受け継がれてきた環境があるからこそ。何か恩返しをしたい」と後押しした。

 一般的な下垂式ではなく、籠に入れて養殖する方法で、魚による食害を防いでいる。稚貝には三倍体と呼ばれる卵を産まない品種を用いており、産卵期に身が痩せて味が落ちる自然のカキと異なり、年間を通じておいしく食べられるという。

 県の水産試験場と連携し、水深ごとの水温と植物プランクトン濃度の測定・記録にも取り組んでおり「従来の方法で養殖が難しくなっているのは事実だが、データを蓄積することで、次世代に漁業をつないでいきたい」と語る。

 昨年9月の時点で5㍉ほどだった稚貝は、現在では手のひら大に育ち、重さは100~150㌘に。出荷可能な大きさだが「もう少し大きく育ててから出したい。次のロケット打ち上げの頃には、納得できるサイズになるはず」と話す。

 今後、漁家民泊や養殖いかだ見学ツアーの実施も検討しており「きれいな海で釣りや体験をしてもらい、特産のカキを味わってもらえたら理想。地元を盛り上げたい」と話している。

 海業関連商品の開発を支援している町農林水産課の田中稜大さんも「遊漁船と養殖、漁家民泊の組み合わせは、漁業者の収入向上につながるモデルケースになる。今後も販路開拓など多面的に支援したい」と話していた。

(2025年6月25日付紙面より)


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牛乳パック灯籠を描く子どもたち=22日、那智勝浦町の勝浦八幡神社
地域 牛乳パック灯籠作り
勝浦八幡神社で七夕準備
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勝浦八幡神社
八幡神社
 那智勝浦町の勝浦八幡神社(髙橋正樹宮司)で、今年も七夕行事に向けた準備が進んでいる。木製の短冊に願いや悩み事を書いてつるす行事で、22日には地域の子どもたちが「笑顔と平和」を願い、牛乳パック灯籠に絵を描いた。

 「普段なかなか口に出せない悩みや願いを集め、心に寄り添える機会に」との思いから、勝浦八幡神社七夕実行委員の上松資弘さんら有志が2021年に始めた。

 今年のテーマは「七夕願いよ届け~光の先には笑顔と平和がある~」。第1回から短冊を寄せている歌手のさだまさしさんの提案により、手作りの地球灯籠や牛乳パック灯籠200個、竹灯籠、ビン玉などで光の演出にも挑戦する。牛乳パック灯籠の制作には、社会福祉法人和歌山県福祉事業団が運営する新宮市の多機能型事業所「えん」の利用者も協力した。

 30日(月)~7月7日(月)の午前8時~午後7時、境内に木製の短冊を設置しており、誰でも自由に願いを書くことができる。参加費は無料。

 七夕当日の7日には、わかば保育園の歌や子どもたちの合唱、下岡有希さんと夏山莉加さんによる歌とピアノのコンサートも計画している。上松さんは「今年もぜひ、気軽に参加してほしい」と呼びかけている。

(2025年6月25日付紙面より)

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参加の僧侶が顕彰碑前で読経した=24日、新宮市の南谷墓地
地域 高木顕明の遺徳しのぶ
非戦、平和願い遠松忌
真宗大谷派
 新宮市大橋通の淨泉寺(山口範之住職)で24日、真宗大谷派主催の「遠松忌(えんしょうき)法要」が営まれた。参列した関係者らが、非戦・平和を唱え、差別と闘った同寺12代住職・高木顕明(けんみょう)(1864~1914年)の遺徳をしのんだ。

 「前(さき)を訪(とぶら)う 今、この時代に聞く非戦・平等の願い」をテーマに毎年営まれている。1998(平成10)年に滋賀県大津市の本證寺で有志らが第1回を営み、翌年から新宮市で開かれている。今年28回目で、2000(平成12)年から同派が主催している。

 関係者らは、淨泉寺での法要に先立ち、市内の南谷墓地にある顕明の顕彰碑前で勤行。顕明の著作「余が社会主義」の一節「南無阿弥陀仏は真に御仏の救済の声である。闇夜の光明である。絶対的平等の保護である」が刻まれた碑の前で、手を合わせて祈りをささげた。

 顕明は新宮出身の医師・大石誠之助(1867~1911年)らと共に非戦、平和を唱えて活動していたが、明治天皇暗殺を企てたとして1910(明治43)年に大逆事件に連座。死刑判決を受けたが後に恩赦で無期懲役となった。

 事件を受け、同派から除籍された顕明師は無念の中、14(大正3)年6月24日に秋田監獄で自死した。96(平成8)年に同派から処分が取り消され、名誉が回復されている。

(2025年6月25日付紙面より)

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